
営業職として転職活動を行う際、どのように自己PRをすればいいか迷う人も多いでしょう。営業職の自己PRのコツについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。アピールポイント別・営業スタイル別・業界別・スキル別などのPR例文も紹介しますので参考にしてみてください。
目次
営業における自己PRのコツとは
営業経験をベースに自己PRをする場合、次のポイントを意識しておくと、強みが伝わりやすくなるでしょう。
具体的な知識・スキルをアピールする
「誰に」「何を」「どのように」の観点で、強みとする経験・スキルを伝えましょう。このとき、応募企業の営業対象・商品特性・営業スタイルと一致するものを強調することが大切です。
<一例>
「誰に」──「大手企業の○○部門に」「中小企業の経営者に」「○○業界に」「個人の富裕層に」
「何を」──「競合が多い商品を」「経営課題解決につながるサービスを」「高額な商品を」
「どのように」──「新規開拓」「社内各部署を巻き込んでのチーム営業」など
具体的な経験を数字や実績でアピールする
「売上高」「売上目標達成率」「担当顧客数」「新規開拓数」「営業成績の社内順位(何人中の何位なのか)」
など、なるべく具体的な数字を盛り込みましょう。売上や顧客開拓については「昨対比」を挙げることで「成長力」を感じてもらえる可能性があります。
表彰歴(社長賞・MVPなど)を記載するのも有効ですが、対象人数や年間受賞者数など、社外の人から見てもレベルがわかるように伝えるといいでしょう。
数字や実績を出したプロセスを記載する
数字や実績を伝えるだけでなく、その達成までのプロセスにおいて、どのような戦略を立て、どのような行動を取ったか、どのような工夫をしたかを伝えます。そのプロセスを「自社でも再現してくれそう」と思われれば、プラス評価につながりやすいでしょう。
結論から書き、そこに至ったエピソードを入れ込む
職務経歴書に自己PRを記載する際には、冒頭で結論となる「強み」を伝えましょう。その後、根拠となる実績や具体的なエピソードを伝えることで、読み手が理解しやすくなります。
エピソードを記載する際には、独自に工夫したポイントや心がけたポイントを明確にしましょう。また、異業界の企業に応募する場合は、専門用語・業界用語の使用は避け、汎用的な表現に言い換えます。
企業のニーズに合った自己PRを書く
自分が自信を持っている強みを記載しても、応募企業がそれを求めていなければアピール効果は薄いかもしれません。求人情報や企業ホームページ・SNSでの発信などを見て企業研究を行い、「求める人物像」をつかむことが大切です。
そして、企業のニーズに無理に合わせにいくのではなく、自身がマッチしているポイントを見つけ、その部分を強調してアピールするといいでしょう。採用担当者が「自社で活躍してくれそう」と期待を持てるように伝えることを意識してみてください。
営業職の自己PR例文とポイント
営業職の自己PRの例文を、アピールする内容ごとにご紹介します。参考にしながらアレンジして活用してみてください。
営業実績を具体的な数値を交えて自己アピールする例文
営業として◯◯サービスを提供し、流通・小売業界の顧客50社を担当。5年間連続で目標達成率120%と、社内の平均達成率80%を上回る成果を挙げました。営業活動では、お客さまとの信頼関係を深めることを目標に、訪問頻度アップと顧客ニーズのヒアリングの強化を行い、さらに個別提案による付加価値の提供に注力しました。この5年間で担当企業からのクレームはゼロであり、顧客満足度を高めることも達成できたと感じています。
ポイント
担当顧客数を記載することで「仕事の対応ボリューム」が伝わり、日々の行動のイメージも持ってもらいやすいでしょう。成果を挙げた数字については「社内平均」などと客観的な数字と比較できるよう示すことで、採用担当者の納得感が高まります。
顧客ニーズを引き出すヒアリング能力を自己アピールする例文
「顧客の潜在ニーズを引き出すヒアリング能力」を強みとしています。これまで店舗を対象とする○○ツールの営業として、新規顧客開拓を手がけてきました。まずは店舗を利用するユーザー側の目線で感想を伝え、店舗運営での困りごとや課題のヒアリングに入っていくことで、話をしてもらいやすくなり、潜在ニーズを引き出すことができました。その結果、信頼関係を築いて担当エリアの売上対前年比120%達成につながりました。○○店舗を対象とするサービスを展開している貴社においても、私の店舗向け営業経験を活かし、マーケット拡大に貢献できると考えています。
ポイント
単に「丁寧にヒアリングした」というだけでなく、ヒアリングの切り口や、顧客に話してもらうための工夫を盛り込みましょう。
営業に役立つ資格を自己アピールする例文
中小企業の経営者を対象に、○○サービスの営業を行ってきました。ただ自社サービスを案内するだけでなく、お客さまの経営課題を理解した上で提案を行うことが重要と考え、「中小企業診断士」を取得しました。
経営者との対話の中では、資格の学習で身に付けた「マーケティング」「人材マネジメント」などの知識も活用し、提案を心がけています。こうしたアプローチで信頼を獲得し、○年間で○社の新規顧客獲得につながりました。
ポイント
「どのような目的で資格を取得したのか」「資格を営業場面でどのように活かし、成果につなげているか」をアピールしましょう。なお、社会人経験・業界経験が短い場合や、未経験分野に応募する場合、保有資格とともに、「成長意欲」「向学心」などを伝えるといいでしょう。
目標を達成する意欲が高いことを自己アピールする例文
目標を達成することに強くこだわり、達成のための戦略を立てて営業活動を行ってきました。四半期ごとの目標が決まったら、最終月の前の月に達成できるように月ごとの目標を立て、各月の行動計画へ落とし込みます。この方法により、○カ月連続で目標数字を達成し、昨年には年間で昨対比150%の目標達成によりMVP(営業担当者○名中1名)も受賞しました。
ポイント
目標達成のためにどのような行動をしたのかに加え、目標達成の実績を数字で伝えると説得力が高まるでしょう。
提案力の高さを自己アピールする例文
私は「提案力」を強みとしています。中小企業を対象とした○○システムの提案においては、使用する部門すべての担当者にヒアリングを行い、さまざまな立場・観点を提案書に反映することで、納得感・安心感を抱いていただけています。また、プレゼンテーションの際には、図を用いながら、平易な言葉でわかりやすく伝えることを心がけています。ところどころで立ち止まり、不明点や疑問点を確認しながら進めることで、複雑な仕様や技術に関しても理解していただいています。
こうした提案により、先期は他社からのリプレイス○社、新規導入○社の成果を挙げ、売上目標前年比130%を達成しました。
ポイント
提案に至るまでの行動や準備、提案を行う際の工夫を伝えましょう。提案が採用された実績を数字で伝えるのもいいでしょう。
【スタイル別】営業の自己PR例文
主な営業スタイル別に、自己PR例文とアピールするポイントをご紹介します。
法人営業
課題を想定したアプローチを強みとしています。クライアント企業について、メディア、ニュースリリース、企業SNSなど多方面から情報を収集し、現在抱えている課題や求めている情報などを想定した上で提案のイメージを描き、商談に臨んでいます。結果、「当社が求めているものを提供してくれる」と喜んでいただけることが多く、新規受注獲得や長期継続につながっています。困りごとが生じた際にも、真っ先に相談いただける関係を築けました。
ポイント
課題の発見・解決力を伝えるとプラス評価につながる可能性があります。決裁のキーパーソンにアプローチした経験や他部署を巻き込んで組織営業を展開した経験、経営層の信頼を獲得するために工夫したことなどがアピールポイントとなり得るでしょう。
個人営業
ポイント
顧客に安心感や信頼感を抱いてもらえる工夫を伝えるといいでしょう。ほか、フットワークの軽さや行動のスピードなども評価される可能性が高いといえます。「紹介の多さ」もアピール材料として有効でしょう。
ルート営業
数値分析や課題発見力を強みとしています。食品の営業として、スーパーマーケットを担当してきました。ルート営業として納品・在庫確認や新商品の案内を行うだけにとどまらず、各店舗の利用者層や売れ筋などを分析し、販売戦略への提案にも注力しています。担当する○店舗のうち○店舗において、自社商品の売上前年比120~150%を達成しています。こうした活動で信頼を獲得し、キャンペーンやイベント情報などをいち早く教えていただける関係を構築しています。
ポイント
ルーティン業務や顧客との関係維持だけにとどまらない、主体的な取り組みの経験をアピールするといいでしょう。顧客との関係を深める工夫や具体的なエピソードなどもアピール材料として有効でしょう。
新規開拓営業
新規顧客開拓で成果を挙げてきました。会社から与えられた目標とは別に、独自に週○件の新規アポイント獲得の目標を掲げて取り組みました。競合他社の製品よりも高額であることが理由で選ばれないケースが多いことから、お客さまへの課題のヒアリングをベースに、3年後・5年後・10年後といった中長期でのメリットや効果をプレゼンすることで受注につなげています。先期には営業所で1位となる、○社の新規獲得を達成しました。
ポイント
新規開拓においての行動や工夫をなるべく具体的に伝えましょう。新規開拓営業では、目標達成意欲の高さやフットワークなども評価につながる可能性があるため、アピールするといいでしょう。
【業界別】営業の自己PR例文
業界別に、自己PR例文とアピールするポイントをご紹介します。
不動産営業
ポイント
高額な商材だけに、一定の時間をかけて信頼を獲得することが重視される営業であることから、顧客に向き合うスタンスと信頼獲得のための工夫を伝えるといいでしょう。
自動車営業
ポイント
短時間で顧客のニーズをつかみ、適切な情報提供を行う力、車の性能や特徴をわかりやすく説明する力などが評価されるポイントの一つです。
MR・医療機器営業
ポイント
ドクターとのやりとりでは短時間で濃密な情報を提供することが重要な仕事であるため、アプローチやコミュニケーションスタイルの強みをアピールするといいでしょう。
インターネット関連営業
ポイント
扱うサービスにもよりますが、顧客からは技術面や操作性などでの疑問を持たれたり要望を受けたりするケースも多いため、不安解消の工夫やニーズに沿った提案などの経験を伝えるのも有効でしょう。
金融・保険営業
ポイント
個人のライフプランに寄り添う営業であるだけに、「傾聴」「ホスピタリティ」「誠実さ」「気配り」などのコミュニケーション力が評価されやすいといえるでしょう。顧客とのエピソードを伝えるのも有効でしょう。
【スキル別】営業の自己PR例文
強みとするスキルをアピールしたい場合の自己PR例文をご紹介します。
コミュニケーションスキル
ITツールを導入する提案営業において、相手に応じた伝え方を心がけています。例えば、システム部門のエンジニアには伝わりやすい専門用語や略語を使う一方、ユーザーとなる部門の責任者に対しては相手のITリテラシーに合わせてかみ砕いた表現で説明しています。こうして各関係者の理解を促進して導入への合意形成へつなげるとともに、安心感を持っていただいています。
信頼関係の構築力
顧客との信頼関係の構築を強みとしています。信頼を獲得するため「約束を守る」「スピーディな対応」を常に意識してきました。例えば、アポイントには絶対に遅れない、質問を受けたら24時間以内に回答する、依頼されたことにはすぐに着手して進捗状況をこまめに報告する、納期を厳守するといった行動を徹底しています。
交渉力
交渉力を強みとしています。人材派遣の営業においては、派遣スタッフが派遣先の職場に不満を抱き、継続就業につながらないケースもあります。そこで就業先部門と人事部門の双方に対し、改善策を提案しながら対応を求める交渉を行うことで、派遣スタッフと就業先の円滑な関係構築をサポートしています。
一方的に要望を伝えるのではなく、相手の状況や立場を理解・共感しながら交渉することを大切にしています。
分析力
粘り強さ
「粘り強さ」を強みとしています。先輩から引き継いだある顧客は、過去に不適切な対応があったことから○年間取引が途絶えていたのですが、改めて週1回は訪問して先方に役立つ情報を届けるようにしました。最初は相手にされなかったのですが、半年間続けたところ提案を受け入れていただけるようになり、取引を再開することができました。以前の年間受注額の2倍となる○○万円まで売上を拡大させました。
未経験から営業職に転職する場合の自己PR例文
未経験から営業職を目指す場合、「自身の強み」「学習意欲」「貢献意欲」などを伝えるといいでしょう。自己PR例文をご紹介します。
【例文】自身の強み
【例文】学習意欲
【例文】貢献意欲
営業職に転職する際は転職エージェントに相談してみよう
営業職に求められるスキルは、業界・企業・商材によって異なります。自身の強みを活かせる分野を選び、適切な自己アピールをすることで、転職の実現と入社後の活躍につながるでしょう。
自身の強みや、どのように自己PRすればいいかわからない場合は、転職エージェントに相談してみるといいでしょう。キャリアの棚卸しのサポートを通じ、自身では気付かなかったアピールポイントが見つかるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
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